モラルハラスメント
目次
1.モラルハラスメント(モラハラ)とは
「モラルハラスメント(モラハラ)」とは、その提唱者であるフランスの精神科医によると、「言葉や態度で相手の人格を繰り返し執拗に傷つけ、その恐怖や苦痛によって相手を支配し、思い通りに操る暴力のこと」をいいます。正に的を射た定義です。
典型的なドメスティックバイオレンス(DV)とは違い、実際に殴る蹴るなどの暴力を振るわけではないのですが、言葉や行動、態度によって妻の「心を痛めつける暴力」です。
モラルハラスメントを行う夫をモラハラ夫と呼びます。
モラハラ夫は、罵ったり、むやみ怒鳴りつけたりすることの他、妻の存在を黙殺したり、侮蔑しきった態度で接したりすることにより、妻の人格を否定しその心を痛めつけます。
さらに、自分の言うとおりにしなければ、威圧的な暴言を吐いたり、めちゃくちゃにしてやるなどの脅しをかけ、「怖い」と感じさせ、自分の思いどおりに妻を「支配」しようとします。
2.モラルハラスメントの特徴
モラハラ夫が、モラハラ言動を行うのは、家の中だけです。
一歩外に出れば、モラハラ夫は、絵に描いたような理想の夫を装います。
またモラハラが行われていても、目に見える外傷を負うわけではないので、外部の第三者も気付き難いのが通常です。
妻が第三者に相談したとしても、モラハラ夫は外では「いい人」なので、なかなか第三者の理解を得ることができず、「よくある夫婦喧嘩」程度にしか思ってもらえないことがよくあります。
中には、モラハラ被害を受けている妻自身も被害を受けていることに気づいていない場合もあります。
このように外部から見えにくく、妻一人で悩み問題が深刻化しやすいのがモラハラ案件の特徴です。
従って、妻自身あるいは妻からそのような話を聞いた両親や友人などの第三者が少しでも違和感を感じたら、専門家に相談してみるべきです。
モラルハラスメントを疑うべき場合と相談すべき専門家については後述します。
3.モラルハラスメントを疑うべき場合(単なる夫婦喧嘩との区別)
モラルハラスメントにあたるかどうかという点については、様々の説明がありますが、一言でいうと、妻が夫を「怖い」と思い「無力感」を感じているかどうかだと考えます。
妻自身あるいは相談を受けた両親や友人は「(妻が)夫に対し、怖いと思い、無力感を感じている」ようであれば、モラルハラスメントを疑うべきです。
モラハラ夫の特徴は、前述のとおり、様々な言動により妻の「心を痛めつけ」、威圧的な暴言と脅しにより、妻に恐怖心と無力感を与え、自分の思い通りに「支配」しようとする点にあるからです。
いわゆる「犬も食わぬ夫婦喧嘩」との違いはまさにここにあります。単なる夫婦喧嘩での夫の言動とモラハラ夫の言動の違いを分かりやすく説明すれば次のようになるかと思います。
・単なる夫婦喧嘩の場合は、
一時的に怒りに任せて(いわゆるカッとなって)意図的に「バカ」だの「アホ」だのあるいはもっと相手を傷つけることを言ってしまうことがありますが、相手の人格を叩きのめすことを目的にはしていません。これに対しモラハラ夫の言動は、妻の人格を徹底的に叩きのめす目的を伴っています。
従って、モラハラ夫の場合は、数回の「バカ」などの罵りではなく、日常生活の中で何度も繰り返し、ことあるごとに「お前はバカだ」「お前はつまらない」「生きている価値もない」などの人格を否定する発言や態度を繰り返します。
単なる夫婦喧嘩の場合は、一定の暗黙のルールがあり、互いにどこかで手加減しますし、喧嘩を終わらせるタイミングや妥協点を探りあいます。
これは互いの立場を考え、コミュニケーションが双方向になされているからです。
これに対し、モラルハラスメントは、一方の気が済むまで、責め立て痛めつける「いじめ」であり、一方が他方を一方的に攻撃するという一方通行の関係です。
4.モラハラ夫の特徴
モラハラ夫は、見かけはごく普通で、外づらがよいので、第三者からは「優しそう」「いい人」に見られている場合が多いです。通常、モラハラ夫は次のような特徴があります。
① 自己顕示欲が高い
モラハラ夫は周りから自分がどう見られているかをとても気にされる方が多い傾向にあります。プライドが高く、「仕事ができる」「才能がある」「優秀である」と見られたいと思っています。
実際には、世間で「エリート」と呼ばれる方が、モラルハラスメントの加害者になっているケースが多く見られます。
② 自分の非を認めない、責任を転嫁する
モラハラ夫の特徴として、何か問題が起こった場合、自分の非を認めません。モラハラ夫にとっては、常に正しいのは夫で、問題の原因は妻でなければなりません。
そのために実に巧妙に責任転嫁をします。
自分が浮気をしたとしても「浮気させるようなお前が悪い」というように相手のせいにしたり、何か問題が起こった際には「誰のおかげで飯が食えているのか!」などと話をすりかえる術にも長けています。
③ 嘘をつくのが上手い
モラハラ夫は、自分が優位に立つために、都合のいいように事実を曲げて話したり、どんな嘘でも平気でつきます。
嘘が判明した場合にも、「そんなことは言っていない」とか「冗談だったのに、本気にしたの?」などと言ってごまかします。モラハラ夫は嘘をつく天才です。
④ 突然起こりだすことがある
突然怒ることがあることも、モラハラ夫の特徴です。そうすることで、自分が常に優位に立とうとします。定期的に怒ることで、夫婦関係に上下関係をつけたいのです。
テレビを見ていると突然「うるさい、テレビを消せ」といった具合に突然怒り出したりします。
5.モラルハラスメントだと分かったら何をすべきか
別居を見据えて、外部の専門家に相談してください。専門家はモラルハラスメントについて見識のある弁護士が適切です。
残念ながら、モラハラ夫に悔悛させモラハラをやめさせるのは非常に困難であり、それを期待はしない方がよいでしょう。
あなたがモラルハラスメントの被害から逃れるためには、あなたの心と身体の健康を取り戻さなければなりません。そのためには、モラハラ夫から物理的に距離を置く必要があります。そこで次のような手順ですすめていくのが理想的です。
① 親族や友人のサポートを得て、あるいは公的支援機関(配偶者暴力相談支援センター、女性センター、精神保健福祉センター等)や全国共通DVホットライン等の電話相談を利用して、別居する
② 精神状態によっては、精神科医やカウンセラーによる適切なケアを受けるとともに、
③ 弁護士の法的サポートを受け、精神的にも物理的にもモラハラ夫ときっぱり離別する。
もちろん、現実にはなかなか簡単にいかないことが多いでしょう。実際には、まず具体的に何から手をつけたらよいのか分からないのが通常かと思います。あるいは相談すべき親族や友人がいない方もいらっしゃるかもしれません。
そのようなときには、一人で悩まずに当事務所にご相談下さい。
あなたの置かれている状況を丁寧にお聞きしたうえで、今後あなたがやるべきことを分かりやすくアドバイスし、あなたの自立をサポートするご用意があります。
またご自身が夫から受けている言動がモラルハラスメントなのかどうかよくわからないという方も一度ご相談に来られることをお勧めします。
当事務所では、離婚が成立しさえすればよいというのではなく、依頼された方の離婚後の生活がよりよいものになるように、常にそれを見据えながら離婚案件の処理を進めます。
ご相談される方の話を丁寧に聴いて状況を正確に把握したうえで、離婚原因の問題、お金の問題、子どもの問題、それら問題ごとにご相談される方の置かれた状況を整理し、将来も 見据えたBestな解決策を示します。