家庭内別居は財産分与の基準日となるか(財産分与の基準日が争点となった事例)

依頼者

【属性】(ご依頼者)女性 50代後半 職業 会社員

       (相手方) 男性 60代前半 職業 契約社員

【未成年の子ども】無し

【同居・別居】離婚後別居

【解決までに掛かった期間】1年2カ月

【解決手段】調停(期日の回数:7回)、審判

【相手方の弁護士の有無】

 

【依頼のきっかけ】

依頼者は、10年以上前から相手方と殆ど口も利かない状態ではあったが、夫の分も家事は行い、生活費も双方で分担する等生活を共にしており、相談時も同居中であった。

1カ月前から生活費を渡されなくなったことに加え、夫から離婚届を渡されたが、財産分与や年金分割の手続きが不安になった為、当職に相談に来られた。

その数か月後、子が大学を卒業し社会人となったため、養育費も問題にならないことから、離婚したうえで、財産分与と年金分割についての解決をご依頼された。

 

【弁護士の対応及び結果】

家裁に財産分与調停及び年金分割調停の申立てを行った。

年金分割については速やかに成立に至ったが、財産分与については、離婚日を基準日とする当方の主張に対し、相手方が10年前から口を利かない状態であったことを家庭内別居状態であったとし、財産分与の基準日を10年前と主張したことから、財産分与の基準日が争点となり、調停での合意に至らず、審判に移行した。

10年前と離婚日では、当然、対象となる財産額に大きな開きがある。

審判では、当方主張のとおり、離婚日を基準日とする財産分与の審判がなされた(分与額4千万円余)。

 

【解決のポイント】

家庭内別居をもって所謂別居(住まいを異にする別居)と同視して家庭内別居が始まった日を財産分与の基準日とする主張がなされることは珍しくない。

しかし、家庭内別居といっても、自宅では口を利かず食事も別々であるが家事育児や家計は協力状態にあるものから、完全に家計も分離し単に住まいが同一に過ぎない状況のものまでその態様は様々であり、一概に所謂別居と同視することはできない。

財産分与が夫婦で形成した財産を公平に分配することを目的とする制度であるところ、一般的に所謂別居が財産分与の基準日とされるのは、別居により、家計が分離することにより夫婦での財産形成の基盤(協力関係)が無くなることが通常であるからである。

とすれば、本件のように、単に口を利かなくなっただけの状態(加えて、夫が殆ど自室に籠っていたとしても)をもって、所謂別居と同様に財産分与の基準日とすることは相当ではない。

本件審判において裁判官は、当方と同じ見解に立ち、依頼者と相手方は生活費を分担し、依頼者が相手方の家事を行うなどしてきたと認定したうえで、財産形成にあたっての協力関係が継続していたことを理由に財産分与を離婚日と判断した。

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