監護権
1.監護者とは、
親権者の役割のうち、子の養育監護、つまり、子どもと生活を共にし、子の心身の成長のため、身の回りの世話、しつけ、教育などをする権利(監護権)を有するものをいいます。
離婚の際には、親権者と監護者を別の親に帰属させることもできます。
親権をめぐる紛争が紛糾している場合、例えば、一人息子の親権をめぐって父親とその家族が、「息子は、わが家の跡取りなので、親権は絶対に渡さない」と言い、母親は、「父親には子どもを引き取って面倒みることはできないから、母親である私こそが親権者にふさわしい」と主張して双方譲らない場合に、これを解決するために、父親を親権者(子は父親の戸籍に残る)、母親を監護者(実際に子どもを引き取って面倒を見るのは母親とする)ことがあります。
子どもがまだ幼い場合や、親権をめぐる父母の対立が激しい場合にこのような方法をとることが考えられます。また離婚後の親権変更が困難な場合に、相手を親権者としたまま自分を監護者として認めてもらうことによって子どもとの生活を実現する方法としても検討してみる価値はあると思います。もっとも、監護権は、親権の重要な一部ですから、これを親権者と別の親に帰属させることは子どもの監護教育の面から望ましくないと、親権と監護権の分離について消極的な意見も少なくありません。実際に裁判実務上では、親権者と別に監護者が定められる例はあまりありません。
親権者と監護者を分ける方が妥当であると言われている場合として次のようなものがあります。
① 父親が親権者と決まったものの、子どもが乳幼児であるため母親の養育が必要とされる場合
② 父母のいずれも、子を養育するのに不適格であるという場合
(この場合、祖父母や親の兄弟姉妹など父母以外の第三者が監護者として指定されます。)
③ 父母双方が親権者となることを譲らず、紛争状態を早期に解決して子の精神状態を安定させる必要がある場合
④ 子の福祉のために、親権と監護権を分けることによって共同親権に近い状態を保つことが適切な場合
⑤ 親権者に子を監護させる準備期間を必要とする場合
2.監護者は、親権者のように、法律上、離婚時までに決める必要はありません。
協議離婚の際に、相手を親権者と定めたとしても、その後の協議によって親権を有しない親を監護者と定めることもできます。
協議がまとまらない場合や、協議することができない場合には、家庭裁判所に「監護者の指定」の調停の申立てをすることができます。
調停でも協議がまとまらない場合には、調停不成立となり、そのまま審判に移行します。
審判では、家庭裁判所調査官の事実調査によって判明した事実の一切も考慮したうえで、申立人を監護者と指定するか否かを裁判所が子どもの福祉の観点から判断します。
解決事例
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