モラハラ夫との離婚において、早期に調停に移行したことで希望通りの財産分与を獲得することができた事例
【属性】(ご依頼者)女性 40代前半 職業 パート
(相手方) 男性 50代後半 職業 会社員
【未成年の子ども】2人
【同居・別居】相談時同居、その後別居
【財産】自宅不動産他不動産多数(相手方名義)
【解決までに掛かった期間】約2年7か月
【解決手段】調停 期日の回数:17回
【依頼のきっかけ】
依頼者は、相手方のモラハラにより、相手方が帰宅する時間になると、動悸がするなど、毎日緊張を強いられる日々が続いていた。そのような生活に限界を感じた依頼者は離婚を決意し、当事務所に相談した結果、相手方に対する離婚及び婚姻費用の請求を弁護士に依頼した。
依頼者が相手方との離婚を決意した具体的な理由は、次のとおりである。
①相手方からの暴言(些細な事でも意に沿わないと怒鳴り付ける)、精神的虐待。
②わずかな生活費しか渡してくれない。生活費としては到底足りず、自分の食費を抑えている状況であった。
③自由がない。収入はすべて相手方が管理し、月数万円を渡されるだけであり、買い物は全て相手方が決め、依頼者の選択の余地はなかった。
【弁護士の対応】
同居しながら離婚協議あるいは離婚調停を進めることは難しいと思われたことから、依頼者に別居をすることを勧め、依頼者は別居を開始した。その後、速やかに離婚調停と婚姻費用分担請求事件を申立てた。
いずれの調停も不成立となったが、婚姻費用については審判で月額13万円の婚姻費用の支払が相手方に命じられた。
その後、相手方に弁護士が就き、相手方から離婚調停を申立てられてきた。
養育費と財産分与が争点となり、養育費については合意が見込まれたが、財産分与については、当方が開示を要求する財産資料の開示に相手方が応じない状況が続いた。
当方は調査嘱託申立を考えたが、調停においては、相手方の同意がないと裁判所は調査嘱託を認めない。そこで、財産分与を除く、養育費等その他の離婚条件について合意し離婚調停を成立させることにした。
その後、財産分与について、審判まで移行することも想定のうえ財産分与調停を申立てた。
【結果】
財産分与調停においても、相手方は、当初、当方が開示を要求する財産資料の開示を渋っていたが、審判に移行すれば、当該財産資料について調査嘱託が認められ当該財産の存否・金額が明らかになることが想定されたため、最終的には当該財産の開示に応じた。
その結果、相手方名義の財産が多額に上ることが明らかとなったが、そこで相手方は、預金には親からの生前贈与が含まれる、株式も親からの生前贈与が原資となっており、それらは特有財産であり財産分与の対象ではないとの主張を行った。更には親に対する多額の借金があるとの主張を展開した。
相手方のそれら主張は、依頼者も初耳であり、その主張の真否が怪しく、証拠も不十分であることから相手方の主張は否認した。その結果、調停は不成立となり、審判に移行した。
審判においても、当方は、相手方が主張する生前贈与を裏付ける確証が極めて不十分であること、親からの借金については、相手方が提出した証拠の原本を確認したうえで明らかに捏造であることを指摘した。
その結果、審判においては、相手方の主張する親からの生前贈与や親からの多額の借金の事実は否定され、当方が主張する財産分与額が認められた。
相手方は、同審判結果を不服として抗告したが、抗告は棄却され、同審判は確定した。
依頼を受けてから抗告棄却が確定するまで、約2年と7カ月を要したが、最終的には、当方請求額とおりの財産分与金(3000万円弱)が相手方から支払われ、依頼者の満足のいく結果となった。
【解決のポイント】
財産分与の対象となるべき財産について、相手方が開示に応じない場合、協議での解決は困難な場合が多い。そのような場合は、速やかに裁判所のテーブルに乗せ解決を図ることが有益である。調停レベルでは、相手方が開示を法的に強制することは難しいが、審判になった場合は、調査嘱託(裁判所から対象財産を保有する会社等に財産内容を照会する手続)を利用することにより、財産内容を明らかにすることができる。
また、特有財産等の主張についても、証拠に基づく判断がなされるため、適正な解決が図られることが期待できる。
因みに、本件では、相手方に弁護士が付いており、審判になれば、調査嘱託が実施されることが不可避であることが分かっていたため、相手方が調停段階で調査嘱託を実施することに同意したので、調停段階で調査嘱託が実施さている。審判と異なり、調停段階において調査嘱託を実施するには、通常、相手方の同意を要する扱いになっていることは留意しておくべきである。
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