Q.ひとり親の支援制度には、どのようなものがありますでしょうか?
質問
私は、子供2人の母親ですが、夫との離婚を考えています。離婚したら、私が親権者となり、子供を育てていくつもりです。
ひとり親となった場合、色々な支援制度があると聞きましたが、どのようなものがあるのでしょうか。
回答
1.各地方自治体(都道府県・区・市)により多少異なりますが、多くの自治体では、経済的に苦しいひとり親家庭を支援する制度として、次のような福祉制度を設けています。
(1)手当(給付金)制度
(2)融資制度
(3)優遇制度
①寡婦・寡夫控除
②ひとり親家庭医療費助成
③福祉定期預金制度・利子非課税制度
④JR通勤定期割引制度
(4)就業支援制度
(5)生活保護
2. 手当(給付金)制度(以下、東京都町田市の例です)
①児童手当
ひとり親でなくても、中学校終了までにある児童を養育する保護者が受けられる手当です。ひとり親家庭の場合は、後に説明します児童扶養手当、児童育成手当と合わせて受け取ることができます。
手当月額は児童一人あたり、次のとおりです。
3歳未満 | 15,000円 |
3歳~小学生(第1子・第2子) | 10,000円 |
3歳~小学生(第3子以降) | 10,000円 |
中学生 | 10,000円 |
※2012年6月分手当から、保護者の所得制限が設けられています。保護者の所得が制限額を超過する場合、児童の年齢に関わらず一律5,000円となります。所得制限額は次のとおりです。
扶養親族等の数 | 所得額 |
0人 | 6,300,000円 |
1人 | 6,680,000円 |
2人 | 7,060,000円 |
3人 | 7,440,000円 |
扶養人数が1人増えるごとに380,000円加算 |
※所得とは、給与所得者については、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」、自営業者等で確定申 告をしている方については、確定申告書の「所得金額合計額」をいいます。
※控除対象配偶者については扶養人数に含みますが、配偶者特別控除該当者については扶養人数に含みません。
②児童扶養手当
ひとり親家庭等に支給される手当(給付金)です。母子家庭だけでなく、父子家庭や、公的年金を受給している祖父母が孫を扶養する場合も給付対象となっています。受給できるのは、子供が満18歳になる年度の3月31日までです。
手当月額は、次のとおりです。
第1子 | 42,000円~9,910円(所得に応じて決定されます) |
第2子 | 5,000円加算 |
第3子以降 | 1人につき3,000円加算 |
児童扶養手当の支給には、認定申請が必要であり、申請時には細かな聞き取り調査があります。例えば、どのようにして生計を立てているのか、子供の監護の事実、離婚や別居の確認、養育費や就労状況及び他の手当受給の有無といったことについて聞かれます。
③児童育成手当、障害手当
ひとり親家庭またはひとり親家庭に準ずる家庭に支給される手当です。受給できるのは、子供が満18歳になる年度の3月31日までです。 児童扶養手当と合わせて給付を受けることができます。
手当月額は、児童1人につき13,500円です。
ただし、所得制限額を超えると受給資格はありません。所得制限額は次のとおりです。詳しく自治体窓口に確認してください。
税法上の扶養人数 | 所得限度額 |
0人 | 3,684,000円未満 |
1人 | 4,064,000円未満 |
2人 | 4,444,000円未満 |
3人 | 4,824,000円未満 |
4人 | 5,204,000円未満 |
扶養人数1人増える毎に380,000円加算 |
一定の障害を有する20歳未満の児童を養育する保護者でひとり親家庭の場合には、上記の児童育成手当金に加えて、児童1人につき月額15,500円の障害手当を受けることができます。ただし、所得の制限を超えたとき、または児童が児童福祉施設等の施設に入所しているときは、支給の対象となりません。
④その他
その他にも、例えば東京都町田市では、「幼稚園児の保護者に対する補助金」制度(世帯の市民税の所得割額によって補助額は異なります)や、小中学校でかかる費用の一部(学用品通学用品費、校外活動費、修学旅行費、給食費等)について援助がうけられる「就学援助費」といった制度があります。
3.融資制度
①母子・父子・寡婦福祉資金
ひとり親家庭の方が経済的に自立して安定した生活をおくるために必要とする資金を貸し付けてくれる制度です。貸付金の種類は様々で、生活資金、転居資金、修学資金、修学支度資金といったものがあり、償還期間は資金事に定められおり、利子は無利子です。
ただし、貸付にあたっては審査があり、資金の種類によっては、連帯保証人が必要となる場合がありますので、詳しくは、自治体の担当窓口に問い合わせされることをお勧めします。
②その他
その他にも、女性福祉資金や総合支援資金、生活福祉資金といった様々な融資制度が用意されていますので、詳しくは、自治体の担当窓口に問い合わせされることをお勧めします。
4.優遇制度
①寡婦・寡夫控除
ひとり親家庭の親が未成年の子供を扶養している場合、申告すれば税金の負担が軽くなります。勤め先の担当部署や税務署に相談してみてください。控除により税負担が軽くなると、保育料も安くなる可能性があります。
②ひとり親家庭医療費助成
ひとり親家庭が医療を受けた場合、医療費の一部が返ってくる制度です。助成額が市町村によって異なります。
③福祉定期預金制度・利子非課税制度
福祉定期預金制度は、児童扶養手当を受けている人が、一般より金利が優遇される制度です。利子非課税制度は、同じく一定額までの利子が非課税となります。どちらも金融機関への申請が必要です。
④JR通勤定期割引制度
児童扶養手当を受けている人は、JRの通勤定期券が3割引きとなります。
⑤その他
その他、自治体によっては、児童福祉手当を受けて一定の要件に該当する家庭には、水道・下水道料金など公共料金が減額される制度がありますので、お住まいの市町村に問い合わせされることをお勧めします。
5.就業支援制度
①就業相談・職業紹介
育児中の女性に特化した就業相談・紹介機関として、マザーズハローワークがあります。東京では、渋谷と立川にあります。
その他、一般のハローワーク事務所でも、マザーコーナーが設けられており、ひとり親も相談しやすくなっています。東京都内では、他にも東京都ひとり親家庭支援センターはあと飯田橋があり、そこでもひとり親家庭の就業に関する相談や職業の紹介等を行っています。
②職業訓練
各自治体(都・市町村)では、ひとり親向けに、委託機関による託児サービス付きの公共職業訓練が実施されています。
③給付金:就業を手助けするための補助金として、次のようなものがあります。
・職業転換給付金(ひとり親家庭になって3年以内に職業訓練を受けた人に支給される手当)
・職業訓練受講給付金(雇用保険がない人を対象とした職業訓練費用の一部援助)
・高等技能訓練促進給付金(看護師、保育士、介護福祉士、作業療法士などの2年以上の養成機関に
入った場合に、生活費を支援するもの)
・自立支援教育訓練給付金(教育訓練終了後に受講料の一部が支給されるもの)
④雇用保険給付
突然の解雇などの場合、ひとり親であれば、雇用保険の給付日数を延長してもらえる場合があります。また、ひとり親の場合、期間労働者(派遣社員)などでも受給できます。その他、早期に再就職した人には、再就職手当というものが給付されます。
6.生活保護
どうしても、生活費を得る方法がない場合、生活保護という選択があります。生活保護は、最低限の生活を保障する制度ですが、本当に困っている方は、ためらわずにこの制度を利用すべきです。
生活保護を受給するためには、一定の受給要件が必要ですが、例えばこれまで専業主婦でひとり親となられた方で、まだ幼児(特に複数)を抱えており、働きに出ることができる時間が極めて限られる方のような場合、児童扶養手当等の公的給付金や夫からの養育費だけでは到底生活できない状況にある方は、生活保護の申請を検討してみる必要があると思われます。
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