Q.離婚から年月を経た場合、その期間ならびにこれからの養育費を請求できますか?

質問 

 私には、子供がまだ幼児のころに離婚したのですが、その際、元夫と養育費の取り決めをしていませんでした。

 離婚から9年が経ちますが、子供も中学入学という歳になりこれから養育にかかる費用も多くなりますので、養育費を請求したいと思います。これからの養育費について請求できるでしょうか?
 また、今までの9年間分の養育費についても請求できるでしょうか?

 

回答

1.これからの養育費を請求できるのか。

 養育費の支払い義務は、親子という身分関係そのものに基づいて発生する義務なので、離婚後においても、子供の親である元夫に対して養育費を請求することができます。
この請求できる地位それ自体については、時効等は問題になりません。

 元夫との協議が可能な場合にはまず協議して、養育費の額や支払時期、支払方法等を決めてください。その際は、後に夫が支払いを怠る場合に備えて、公正証書として協議書を作成しておくことをお勧めします。

 元夫との協議が物別れになった、あるいは協議自体ができないという場合には、元夫の住所地を管轄する家庭裁判所に養育費支払いの調停を申し立てることになります。

 家庭裁判所では、申立人である貴方と相手方である元夫の生活状況、社会的地位、双方の資産・収入、家賃や住宅等ローンの支払いなど生活上の支出、子供の人数・年齢などを総合考慮して、具体的な分担額を決めてくれます。

2.養育費は過去の分も含めて請求できるのか。

 離婚の際に、養育費について、額や支払時期などについて具体的な取り決めをしていたかどうかで異なってきます。

 養育費について具体的な取り決めをしていなかった場合には、裁判所の判断も分かれています。

①扶養権利者が扶養を請求した時点で相手方の扶養義務が具体化すると考え、請求以前の養育費支払義務を否定するもの(東京家審昭54.11.8、秋田家審昭48.10.22等)
②扶養権利者の要扶養状態、扶養義務者の扶養可能状態(経済的余力)という事実があれば、具体的な扶養義務、扶養請求権が発生すると考え、公平に反しない限り、過去の分についても養育費の請求を認めるもの(宮崎家審平4.9.1、神戸家審平元11.14)

 

 貴方の場合は、離婚の際に具体的な取り決めをしていなかったということですから、①の立場による場合は、元夫に対して請求した時点からしか養育費の支払いは認められず、過去の分に遡って請求することはできないことになります。

 これに対し、②の立場によれば、過去の分に遡って請求できるということになります。

 したがって、貴方のケースでは、過去の分に遡って請求できるか否かについては、どちらとも言うことができません。

 しかし、いずれにしても、家庭裁判所では、貴方が過去に負担してきた養育費や養育費捻出のためにした借金等についても、申立後の調停や審判の時点で、いわゆる一切の諸事情として考慮したうえで、元夫に求償できる金額と今後の養育費の分担額を公平の見地から決めてもらえますので、貴方が1人でこれまで負担してきた養育費については、公平の見地から元夫にも一定額を負担してもらうということにはなろうかと思います。

3.離婚に際して、養育費について金額や支払い時期等について具体的な取り決めがなされていた場合

 仮に、貴方が養育費について金額や支払い時期等について具体的な取り決めをしていた場合には、過去の分についても、具体的な請求権として請求することができます。

 ただし、養育費の最初の支払い約束日から20年間または最後の支払い約束日から10年間行使しないときは時効消滅することになります(民法168条)。
また、月々の養育費支払請求権も5年間行使しないことによって時効消滅することになります(民法169条)。

 養育費の支払いについての約束が家庭裁判所の調停ないし審判で決められていた場合には、10年の消滅時効に服すことになります(同174条の2)。

  従って、離婚に際して、具体的に養育費の支払いについて取り決めができていた場合、それがあなたと元夫との私的な協議によるものならば、元夫が時効を援用することにより、過去5年以前の養育費支払請求権は時効消滅することになります。
 一方、家庭裁判所の調停ないし審判によるものならば、過去9年間の養育費支払請求権は時効にかかっていませんので、全額請求することができます。


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