Q.養育費はどのようにして算定するのですか?
質問
養育費は、どのようにして算定するのですか。
回答
<標準算定方式と算定表>
1.養育費を原理的な計算方法で算出しようとすると、複雑で手間もかかります。そこで実務では、これを簡略化した「標準算定方式」による計算がなされています。その計算結果を早見表としてまとめたものが「簡易算定表」、一般的には「算定表」と呼ばれているものです。
現在実務で定着している算定表は、令和元年に最高裁判所司法研修所が作成公表した「改訂標準算定方式(算定表)」です。同算定表は、婚姻費用を支払う側(義務者)と婚姻費用の支払を受ける側(権利者)の年収額(公租公課等を控除する前の額面額。給与所得者の場合、源泉徴収票上の「支払金額」を指します。)を収入としてあてはめ、夫婦のみの場合、子供がいる場合には子どもの人数・年齢により区分けして示されています。
2.標準算定方式による計算
「算定表」は、簡便かつ速やかに婚姻費用額を求めることができるものですが、同表は、子どもの人数が3人までと限られており4人以上の場合は用いることができません。また、非親権者に前妻との間の子どもがいる場合等同表が想定しないケースの場合も、同表は用いることができません。そのような場合には、同表の基となっている「標準算定方式」により計算する必要があります。「標準算定方式」による計算は、以下のとおり行います。
<STEP1>権利者・義務者それぞれの基礎収入を計算します
①義務者の総収入×基礎収入割合=義務者の基礎収入
②権利者の総収入×基礎収入=権利者の基礎収入
※「基礎収入」とは、総収入(公租公課等を控除する前の額面額。給与所得者の場合、源泉徴収票上の「支払金額」を指します。)から公租公課・職業費・特別経費(住居に要する費用、保険医療費等)を控除した「純粋に生活に充てられる収入」のことです。基礎収入割合は、次のとおりです(司法研修所偏「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」(法曹会・令和2年)35頁)。
-
給与所得者の場合
収入 |
割合 |
0~75万円 |
54% |
~100万円 |
50% |
~125万円 |
46% |
~175万円 |
44% |
~275万円 |
43% |
~525万円 |
42% |
~725万円 |
41% |
~1325万円 |
40% |
~1475万円 |
39% |
~2000万円 |
30% |
-
自営業者の場合
収入 |
割合 |
0~66万円 |
61% |
~82万円 |
60% |
~98万円 |
59% |
~256万円 |
58% |
~349円 |
57% |
~392万円 |
56% |
~496万円 |
55% |
~563円 |
54% |
~784万円 |
53% |
~942万円 |
52% |
~1046万円 |
51% |
~1179万円 |
50% |
~1482万円 |
49% |
~1567万円 |
48% |
<STEP2>子どもの生活費を計算します。
義務者の基礎収入×子どもの生活費指数 / (義務者の生活費指数+子どもの生活費指数)
※「生活費指数」とは、義務者の収入(婚姻費用算定においては世帯年収)をどのように按分すべきかを示す指数です。これを計算式に当てはめて、権利者に割り振られるべき婚姻費用を計算します。生活費指数は、次のとおりです(司法研修所偏「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」(法曹会・令和2年)47頁)
|
年齢 |
指数 |
親 |
_____ |
100 |
子ども |
0~14歳 |
62 |
15~19歳 |
85 |
<STEP3>義務者が支払う養育費(月額)を計算します。
子どもの生活費×義務者の基礎収入 / (義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)÷12
具体例
例えば、妻が親権者で子ども4人を監護養育する場合には、「算定表」を用いることができませんので、以下のように「標準算定方式」により算出することになります。
夫(義務者):会社員 年収800万円
妻(権利者):パート 年収120万円
子ども:第1子(16歳)、第2子(13歳)、第3子(10歳)、第4子(7歳)
<STEP1><STEP1>夫・妻それぞれの基礎収入を計算します。
①夫の基礎収入=夫の年収×基礎収入割合=800万円×40%=320万円
②妻の基礎収入=妻の年収×基礎収入割合=120万円×46%=55万2,000円
<STEP2>子どもの生活費を計算します。
夫の基礎収入×子どもの生活費指数 / (夫の生活費指数+子どもの生活費指数)÷12
=320万円×(85+62+62+62)/ (100+85+62+62+62)
=233万7,466円
<STEP3>義務者が支払う養育費(月額)を計算します。
子どもの生活費×義務者の基礎収入 /(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)÷12
=233万7,466円×320万円 / (320万円+55万2,000円)÷12
=16万6,131円≒16万6千円
このように、この事例の場合、夫が妻に支払うべき養育費は月額16万6千円となります。
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