お子さんが私立学校に通っている方へ~婚姻費用・養育費について解説~

質問

婚姻費用を請求するにあたり、子が私立学校(中学校・高等学校)に通っている場合の学費を請求できますか。また、子が通っている学習塾代・習い事の費用も併せて請求できますか。

回答

先ず、標準算定方式(算定表)に基づく婚姻費用額には、公立学校の教育費が織り込み済みであることに留意する必要があります。ですので、お子さんが私立学校に通っている場合の学費については、標準算定方式(算定表)に基づく婚姻費用額に織り込み済みの公立学校の教育費を超える学費分、その他学習塾代・習い事の費用の負担については、義務者の承諾、収入、学歴等を考慮して各事案に応じて検討することになります

標準算定方式(算定表)に基づく婚姻費用額には、公立学校に通う子を持つ世帯の平均年収に対応した教育費相当額が織り込み済みですが(この織り込み済みの教育費を、以下「標準的な教育費」と言います。)そこで、子が私立学校に通っている場合の学費や、学習塾代・習い事等標準的な教育費を超える費用の負担をどうするかが問題となることがあります。

私立学校の学費

(1)私立学校の学費の加算の可否

基本的には、①義務者が、明示、又は黙示により、承諾した場合、②義務者の収入・学歴・地位等からその教育費負担が不合理でない場合には、標準的な教育費に加算する方向で検討することになります(新日本法規出版「婚姻費用・養育費の算定」松本哲泓126頁)。従って、同居中から子が既に当該私立学校(中学校・高等学校)に通っている場合等は、原則的に加算されることになります。

また、付属中学校から同じ系列の付属高等学校への進学がエスカレータ式に予定されている場合も、通常、明示又は黙示の承諾があると考えられますので、当該高等学校の学費についても加算すべきことになるでしょう。

これに対して、公立中学校に通っていた子が私立の高等学校へ進学する場合については、義務者の明示又は黙示の承諾がない限り、加算されないことになります。

しかし、義務者の承諾がない場合であっても、子の希望や、子が当該私立高等学校に行かざるを得ない事情(公立の高等学校受験に失敗した場合等)を勘案のうえ、義務者の収入・学歴・地位等からその学費負担が不合理でない場合には加算する方向で検討されます。

(2)加算する場合の計算方法

一般的に、私立学校の学費から標準的な教育費の額を控除した額を当事者双方の基礎収入の割合で按分する方法がよく用いられます。

標準的な教育費の額は、次のとおりです。

子の年齢

標準的な教育費

(年間)

月額換算

(円未満四捨五入)

0歳~14歳 13万1379円 1万948円
15歳~ 25万9342円 2万1612円

(司法研修所偏「養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究」46頁より)

(3)具体例

・夫(義務者):会社員、年収が600万円

・妻(権利者):会社員、年収400万円

・権利者と生活する子:16歳、私立高等学校(年間授業料100万円)

①先ず、当該私立高等学校の年間授業料額から標準的な教育費の額を控除します。100万円-25万9342円=74万658円≒74万円

②次に控除後の金額を義務者(夫)権利者(妻)双方の基礎収入額で按分します。

義務者(夫)の基礎収入=600万円×0.41(基礎収入割合)=246万円

権利者(妻)の基礎収入=400万円×0.42(基礎収入割合)=168万円

義務者が負担すべき加算額は、次のとおり、月額3万3675円となります。

74万658円×246万円/(246万円+168万円)÷12=3万6675円

③したがって、義務者(夫)は、標準算定方式(算定表)に基づく婚姻費用額(当該事案では、約8万3000円)に3万3675円を加算して、義務者(妻)に支払うことになります。

学習塾代・習い事代

同居中から通っている学習塾や習い事に費用については、これを続けることが当事者の経済状況等から不合理であると言える事情がない限り、その費用を分担する義務があると言えます。別居後に通い始めた場合であっても、当該学習塾や習い事に通わせるべき必要性、義務者の収入・学歴・地位等を勘案して、社会通念上、義務者に相応の負担を求めても不合理でないと言える場合には、分担の対象とすべきでしょう。特に、子が受験を控えた高校3年生である場合や、学習が遅れ気味で学校の授業に付いていくことが難しく、補助的に塾で学習させる必要が相応に認めらえるよう場合には、調停等においても、相応の金額の範囲で義務者に負担させることが珍しくありません。

※養育費においても、上記と同様に考えることになります。

自営業者(個人事業主)の場合

なお、お子さんが私立学校に通っているご家庭においては、婚姻費用・養育費の支払義務者が自営業者(個人事業主)の場合が少なくありません。

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