自営業者の場合、婚姻費用算定の基礎となる総収入はどのように認定するでしょうか?
質問
自営業者の場合、婚姻費用算定の基礎となる総収入はどのように認定するでしょうか?
回答
1.自営業者の収入の認定は、一般的に、確定申告書の「課税される所得金額」に基づいて総収入を認定します。
ただし、「課税される所得」には、税法上、種々の観点から控除がなされているものの、現実に支出されていない費用が含まれています。そこで、婚姻費用算出において自営業者の収入を認定するにあたっては、確定申告書において所得から控除される金額のうち、現実に支出されていない費用等を「課税される所得金額」に加算して総収入を認定する必要があります。※「社会保険料控除」については、事業所得のみの場合は控除されますが、事業所得の他に給与所得もある場合には、控除されない場合があるので注意が必要です。
2.加算すべき費用
加算する費用として、具体的には以下のものがあります(一般財団法人法曹会「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」32頁)。
「雑損控除」、「寡婦、寡夫控除」、「勤労学生、障碍者控除」、「配偶者控除」、「配偶者特別控除」、「扶養控除」、「基礎控除」、「青色申告特別控除」、「専従者給与額の合計額(但し、現実に支払いがなされていない場合)」
また、算定表や標準算定方式で既に標準的な額について特別経費として考慮されているものも加算する必要があります。具体的には、以下のものがあります。
「医療費控除」、「生命保険料控除」、「地震保険料控除」
更に、現実に支出があったとしても、婚姻費用、養育費の支払いに優先すべきではないとして、「小規模企業共済等掛金控除」、「寄付金控除」は加算するのが相当と考えらえています。
3.留意点
①経費の水増しが疑われる場合
なかには、経費が水増しされている場合もあるので、疑いがあるときは、所得税青色申告決算書等を検証する必要があります。
②収入に大きな変動がある場合
売上の変動等により年によって収入に大きな変動がある場合には、直近3年程の平均によることが一般的です。
③減価償却費の扱い
経費でよく問題になるのが、「減価償却費」ですが、現実に事業用資産の取得に要した負債の弁済等をしている場合でない限り、現実に支出を要するものではないので、所得金額に加算するのが相当とされています(大阪高平18・6・23、大阪高平18・10・13)。
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